遺産相続

 公正証書遺言ですべての遺産を相続していたが、他の相続人から遺留分減殺請求が出された事例

 

(注)遺留分は相続分の1/2です(例えば相続人が子2人だけの場合、遺留分は、相続分1/21/2、つまり1/4)。そして遺言によって遺留分が侵害された場合、その限度で、遺言の効力を否定し遺産を取り戻すことができます。このことを遺留分減殺請求といいます。

 

 依頼主  小川さん(仮名)、男性60代

 

 相談前

     10数年前父が死亡した際、相続人3(母と長男である私、妹)の間で遺産相続問題が発生し、家庭裁判所の調停で解決したのですが、私と妹の間がこじれたため調停が長引き、かなり苦労しました。

 

そこで、その後母に頼んで「すべての財産を私に相続させる」という公正証書遺言を作ってもらっていたのですが、その母が先日死亡しました。遺産は、自宅の土地建物とその付近の土地、及びかなりの額の預貯金ですが、妹には、遺留分があるため、妹がどんな要求をしてくるか、不安です。私は、定年後再就職しておりますが、できればこの問題を早く解決しておきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 

相談後

   早期解決という依頼の趣旨を尊重し、遺産の範囲やその評価についてできるだけ客観的な資料を作成して、妹さんに解決案を提示しました。

 

しかし、交渉では解決しなかったため、家庭裁判所に遺留分減殺請求に関する調停を申し立てました。申立時には、必要だと思われる資料をすべて提出し、調停中に妹側の弁護士から出された問題点は、できるだけ早く資料を提出したり納得できる範囲内で譲歩しました。

 

以上のような努力をした結果、調停申立後約半年後に調停が成立し、事件を解決することができました。

 

 高原弁護士からのコメント

    公正証書遺言をする場合、妹にも遺留分程度の財産を残してあげるという方法もあります。しかし、本件は、死亡までに10数年が経っていたこと、その間預貯金にはかなりの変動があったことを考えれば、死亡間近に2度目の公正証書遺言をしない限り、紛争が発生していたと思われます。

 

また、通常の場合、妹に渡す遺留分をいかに少なくするかが課題で、そのために、最初は遺産の範囲を少なく出したり、その評価額を少なく主張したり、という駆け引きをすることもありますが、今回の調停では、早期解決というニーズに合わせたやり方を選択しました。ご依頼の趣旨に添った解決ができたと思います。

 

 

 

◎市街地に約100坪の更地があるが、60年前に亡くなった方の名義のままで、各地に約20人の相続人がおられるケースについて、交渉だけで遺産分割が実現できた事案。

 

 依頼主  木下さん(仮名)、女性70  

 

 相談前

   市街地に約100坪の更地があるが、被相続人は60年前に死亡。この方には、前妻に3人、後妻に2人の子があったが、子は全員死亡し、その妻や孫が相続人。うち、前妻の系列の方が12人、後妻の系列の方が8人で、計20人。後者の中の1人が木下さん。前妻が早死にし、その子3人は後妻が育てあげた。遺産分割の話は、これまで何度か持ち上がったが、それぞれの立場立場で思惑、感情が異なり、次第に相互不信が強まる、さりとて家庭裁判所の調停は互いに望まず、結果、年月を徒過してしまった。しかし、木下さんも年を取り、自分の目の黒いうちに解決したいと願うようになった。

 

 解決案

生前贈与や特別寄与に関する木下さんの言い分を詳細に聞き取ったうえ、その言い分を裏付ける証拠の有無・強弱、また、こちらの言い分に固執すると相手もいろいろ主張し、紛争が複雑化長期化し、調停から審判に発展することを丁寧に説明したところ、木下さんも、「遺産を換価したうえ、経費を差引いた残額を法定相続分で分ける」ことを骨子とする解決案を受け入れて下さった。

 

 結 果

そこで、前妻側の中心人物(長男の妻、70代女性)にお手紙を書き、ご自宅を訪問したところ、上記解決案を承諾し、前妻側の取りまとめを約束して下さった。

 

その結果、お二人の合意を前提に、他の相続人にお手紙を差し出したところ、多少の紆余曲折はあったものの、相続登記から、換価、配当までスムーズに進行し、約6か月で遺産分割を終了させることができた。

 

 高原弁護士からのコメント

木下さんと前妻側の中心人物との間には、さまざまな言い分、感情が複雑に交錯していたものの、「目の黒いうちの解決」という一点で、お互いに譲歩して下さった。他方、孫達の大半は、ドライに割り切っておられたため、調停を経ることなく、解決することができました。

 

 

 

◎財産はなく、借金が残っている可能性があるため、相続放棄の手続きをとった事例

 

 依頼主  佐藤さん(仮名)、女性60  

 

 相談前

    夫は、私(佐藤さん)と再婚し、娘が2人できたのですが、先日亡くなりました。夫は、結婚当時、仕事上でできた多額の借金を返済しておりましたが、ここ10年くらいは、取り立てもないため、全部完済しているはずです。しかし100%大丈夫かと言われれば、自信はありません。このような場合、このまま、放っておいてよいでしょうか。

 

 相談後

相続放棄、すなわち、死亡の事実を知ってから原則として3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立をすることを助言。また、両親死亡の場合、娘さん2人が放棄すれば、ご主人の兄弟姉妹が相続人となるため、この人達も相続放棄の手続が必要なこと(娘さん全員の放棄が受理されたことを知ってから3か月以内に)も助言。その結果、全員が相続放棄の手続きをされ、一件落着となりました。弁護士は、戸籍謄本の取り寄せ等を手伝いました。

 

 

 

◎兄弟間の遺産争いが紛糾していたが、調停申立の2年後に家裁の審判で解決した事例

 

 依頼主  寺田さん(仮名)70代女性と、中田さん(仮名)60代男性

 

 相談前

30年前に亡くなった父と3年前亡くなった母の遺産について、長男、二男、長女(寺田さん)、三男(中田さん)の間で遺産争いが勃発。審判で認定された遺産の総額は土地建物、預貯金、株式等で約24,000万円。

長男と二男は、父の生前自宅等の贈与を受けていたが、母の死亡直後から、「高卒後家業の商売を無給で支え、三男が医者になれたのも、自分達のお陰。また、母の遺言書(ただし、コピー)には、長男、二男は6分の2ずつ、長女、三男は6分の1ずつと書いてある。従って、遺言書のとおり分配すべきである。」と主張。長女と三男はこれに反発して、結局話し合いは決裂した。

 

 相談後

弁護士高原は、長女と三男から依頼を受けて、家庭裁判所に調停を申し立てたが、とてもまとまりそうにないため、審判(裁判官の判断による解決)への移行を強く要望した。

 

争点は、多岐にわたったが、 できる限り客観的な資料の収集と文献の調査、依頼者の詳細かつていねいな陳述書の作成に努めた。争点は、①自筆の遺言書(ただし、コピー)の検認を受けているが、これは有効か。②長男、二男の家業を無給で支えたという主張の裏付けがどの程度あるのか、それが特別寄与として認められるか。③二男の母への療養看護がどの程度あったのか、それが特別寄与として認められるか。④三男への6年間の授業料、生活費の仕送りは生前贈与なのか、親の扶養義務の履行なのか。⑤三男の子(孫)に対する学費1,000万円の贈与は、三男に対する贈与か、孫に対する贈与か。⑥三男は開業後両親宅の電気ガス水道代等を負担しているが、これは、三男の特別寄与になるのか。⑦バブルの真最中に長男、二男に贈与された土地の評価をどうするのかなどなど。

 

しかし、担当裁判官の適切な争点整理(コピーの遺言書は無効という点を含め)と、長男側、二男側そして高原の弁護士間の協力(それぞれが依頼者の言い分はきっちり主張すると同時に、土地、建物、株式等の換価には協力した。)の結果、調停申立後2年で審判が出され、紛争は解決した。

 

審判の内容を大局的に表現すれば、「両親の真意は、生前子ども達には、それぞれかなりのものを渡している。従って、遺産はそのことを考慮せずに、平等に分割せよ(持戻し免除の意思表示)という点にあった。従って、遺産は、単純に4等分する。」というものであった。

 

 高原弁護士からのコメント

兄弟間で感情的にも激しく対立し、しかも、争点が多岐にわたている事件であったが、調停申立後2年という短期間で審判が出たことは、高く評価されてよいのではないか。結果も、妥当なものであった。受任時における、事案の把握と見通しが問われる事件であった。