交通事故の和解

交差点で直進車同士が衝突、それぞれ青で侵入と主張している事故で、和解が成立した事例

 依頼主  40代  女性(E子さん)

 

 

 

相談前

   Eさんは、夜11時ごろ、軽四を運転し助手席に娘(高校生)を乗せ幅員5.6mの道路を東進、信号機による交通整理が行われた十字路交差点に進入。Y(20歳)は、乗用車を運転し友人3人を乗せ幅員5.6mの道路を北進、上記交差点に進入。E車がY車の左側面に衝突。Eさん親子は、外傷性頚椎症・腰部打撲傷などで通院中、Yらは、通院していない。なお、Eさんは、人身傷害保険に加入している。他方、Y車は任意保険に加入していない。また、EさんとYは同じ生活圏で暮らしており、Yの父親は暴力団関係者(?)、Y車の助手席に乗っていた友人は、事故直後「何故赤で入ってきたのか!」と怒鳴り込んできた。しかし、Eさんは「絶対に青で発進しており、このままでは納得できない。」と主張。

 

 

相談後(事故5日後に相談あり)

  (治療・後遺症の状況)

Eさん親子は、約5か月の通院後、症状固定(実通院日数はEさん86日、娘さん43日)。2人とも、頚部背部の疼痛(自覚症状)が残る。

症状固定後、自賠責に被害者請求をしたが、約2か月後、後遺障害非該当の通知を受ける。

(警察の捜査状況など)

事故直後の実況見分で、双方とも青で進入したと主張し、事故4か月後に、双方とも不起訴処分となる。そのため、入手できた資料は、実況見分調書のみ。

(訴訟での争点)

以上の経緯を経て、事故11か月後に提訴し、提訴後約1年後に判決

 

  

原告

(Eさん親子)

被告

(Yと車の所有者)

判決

赤信号で停車していたが、信号が青に変わったため発進

信号が青であることを確認し時速40㎞程度で交差点に進入、停止線を越えた辺りで信号が黄色になった

原告の主張どおり。なお、車の損傷状況から判断すると相対的に見て、E車の方が相当程度低速であった

Yは、右方向から赤信号を無視して制限速度(40/h)をはるかに超える速度で直進してきた

認定せず

なお、建物のためお互いの見通しは、非常に悪い

同左

同左

通院に5か月を要した

3か月を超える通院は、事故と因果関係がない

5か月の通院は、相当である

後遺症慰謝料

争う

労働能力に影響を及ぼす後遺症は認められない

 

 

 判決前に、以上の判決内容をベースにした和解案が提示されたが、Yらが拒否し、判決となった。認容額は、Eさんにつき、物損を含む損害計約232万円(1万円未満切捨、以下同じ)から人身傷害保険からのてん補176万円を差し引いた56万円と年5分の損害金、娘さんにつき、損害計121万円から人身傷害保険からのてん補85万円を差し引いた36万円と年5分の損害金。

 Yらは、この判決に控訴し、控訴後5か月目(事故後2年4か月後)にようやく和解が成立。和解額は、Eさんにつき、45万円、娘さんにつき、40万円、いずれも月1万円ずつの分割払、Eさん・娘さんにつき各35万円を約束どおり払えば残りは免除、逆に分割払を2回怠れば、残額を一度に支払う、Yと車の所有者(祖母)の連帯責任、という内容。

 その後現在まで、この分割金が遅れがちに支払われております。

 

 

高原弁護士のコメント

Eさんが赤で停止し、青で発進した」ことをベースにした和解が成立し、ホッとしておりますが、車の破損状況以外、物証がない場合に、当事者の証言だけで黒白をつけることは難しい、ということを実感した事例です。なお、Eさんは、事故後、ドライブレコーダーをつけられたそうです。